FATUM2

「巫女姫様」

そう呼ばれたのはまだ16くらいの少女だった。

漆黒に輝き流れるような黒髪を無造作に後で束ね、白皙の美貌はまったくの無表情

しかしその瞳だけは紅く燃えていた。

 

 

「へーすっごい美人さん」

軽い口調でそう少女をほめたのはまだ若い青年で闇の女神、人から恐れられる黄泉の国の女王

彼はその女神の息子だった。名前はレクス、藍色の髪と同じ瞳を持った青年神だった。

「レクス」

「はいはいなんでしょうかねぇ、母上」

母親、つまり闇の女神が衣擦れの音をさせながらレクスの前にたつ。

紫の髪の美しい女性の姿をしているその闇の女神は息子とよく似た切れ長の瞳と薄い唇を持っていた。

黒のドレスに銀の装飾品を好み、神々との戦争ともなれば軍を指揮し、多くの敵を屠ってきた戦神であるにも

かかわらずその華奢な体はとてもそうは見えずに優雅で繊細なイメージしか与えない。

天上にいる美の女神にも勝る美貌とも称えられた母を見慣れ、また自分の容姿にそれがしっかり受け継がれ

ていることを自覚しているレクスが目を奪われるほど、水晶に映しだされた少女は美しかった。

「この娘、知っていますか?」

「ああ、あの紅の目といえば主神アルマイスの巫女姫でしょう?」

あんなに綺麗だったんだーと感心したように呟きジーと水晶に魅入る。

「あなたにやってもらいたいことがあります。」

「あーなんですか?うーんこの娘の誘拐だったら喜んでするけどなー。」

この馬鹿息子!!そう怒鳴りたいのを必死に押さえ闇の女神が息子の耳をひぱった。

「いたい、いたい!!母上つめ立てないで下さい、」

「まったく、その通りよ、このアルマイスの巫女姫今の名前をテイア、この娘を神の手から解放してくるのです!!」

いきなりの命令にレクスが首をかしげる。

「はい?いったいどうしたんですか母上、そりゃ母上は昔は慈悲深い女神だったらしいでけど、

今じゃ、大魔王とか地獄の悪鬼なんであだ名がよく似合うじゃないですか。」

「レクス!!」

バシンッ小気味いい音が闇の神殿内に響いていった。

「痛いなぁ、可愛い息子の顔に傷が残ったらどうするんですか、まったく、」

ふぅと嘆息し、闇の女神、否、昔優しすぎたゆえに虐げられる下級精霊を見捨てられず自ら黄泉の国を創り、神々に反旗を翻した

主神アルマイスの姉、戦いと海の女神ステラマリス、海というすべての母たる資格を持った最高神であり、主神に最も近い存在であった

母神は息子のその可愛い顔とやらを5センチは引きのばした。

 

 

 

 

 

「まったく、人使いならぬ神使いの荒いばばぁだ、あの年増!!」

聞かれるとおそらく一ヶ月は寝込むだろう、荒業をかけられるだろうがステラマリスは黄泉の国

ここは地上ふらふらと、空を飛びながらゆっくり目指す神殿へと向かっていく。

 

 

 

 

 

「巫女様、どちらに行かれますか?」

主神からテイアの世話を命じられているのは、盲目の老女一人、その老女が彼女の世話と、監視を行っていた。

「瞑想をしたい、塔に行きます」

無表情のままテイアは歩き出す。

たった一人で登った塔、どうせ見張られているのは分かっている。

空が見たい・・・・・

その程度の自由は許されているはずだった。

 

 

 

「わ、やっぱし美人さん」

明るい笑い声、自分を写す切れ長の瞳

自分にはない大きな手を差し出し、突然窓からあわられた青年、レクスはテイアに向かって笑いながらこういった。

「どうも、黄泉の国の道先案内人です。貴女を攫いに来ました。」

冗談めかして言ったレクスの藍色の瞳に惑わされるように。

テイアはレクスの手を取った。

この檻から抜け出すために、もう一度本当の生をいきるために

 

      

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