恋する星の下で
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こんな夢を見た。
「オイ、行くぞ!急げっ!!」
父の声の急かされて、新幹線へと飛び乗る。
夕焼けで橙色に染まった景色が流れていくのを、ぼんやりと眺める。
私は10歳の誕生日の夜から父と、ある男を追っていた。
正確には彼が所持しているモノを追っていて、今は彼も娘と2人で逃亡中なのだけど。
こんな毎日はキライじゃない。でもスキな訳でもない。
コレ以上も、コレ以下も、知らないだけ。
目的の駅に着くと父の携帯電話が鳴った。こういう時は悪い知らせが多いもので。
電話が終わると父は舌打ちと共に呟く。
「クソッ、行き過ぎたか・・・。」
読みが外れたらしく、機嫌が悪い。
今から引き返すのならフェリーが1番早く着くというので、近くの港へ向かった。
船が出航する頃には、辺りを染める色は深い藍色に変わっていた。
到着までには時間があると言うので、私は屋上のプールで泳ぐコトにする。
プールサイドで先客がいるのに気付いた。―――それが誰であるのかも。
向こうもコチラに気付くと、少しだけ驚いた顔をした。
けれどお互い、それだけだった。
その夜は、空に星が見たコトもないくらい溢れていて。
それだけで、別にどうでもいいかとか、思えたんだ。
「ドコに着くんだっけ?」
陸地の灯りが見えたから、何となく話し掛けてみる。
「今にだけ夢中になってたらいいじゃん。だんだん忘れていくんだから。」
先のコトなんて考えているヒマはない。
「・・・・・・そうだね。」
彼女のつくった飛沫が光を映して煌いた。
もうすぐ、夜が明ける。
The
End
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