―――てるてるぼうず てるぼうず あした天気にしておくれ
ベランダの普段は洗濯物が並ぶ場所に、てるてる坊主がつってある。
2人で雨空を眺めてる。きっともうすぐ‥‥。
今日は目が覚めた時からずっと雨が降っている。別に私は雨は好きだから全然構わないんだけど、
今となりにいる人はどうやら違うみたいで。
「雨止まない…。いつ止むんだろ。うっとうしいー。」
さっきからこの調子。独り言だか何だか知らないけど、うっとうしいのは誰かと問い掛けた
いところだ。取り敢えずその言葉は爽やかに無視して、手元の本へと意識を戻す。
「ねぇ これなぁんだ?」
「……ティッシュ。」
突然、本と顔との間にティッシュの塊を差し出され顔を上げると、子供みたいに眼を輝かせた顔があった。
なにティッシュ持って嬉しそうにしてるんだか…。
「……切ない。…ひっどいよー。」
後半はどこから出してるのか見当もつかない声で、その塊を動かしながら言う。
「……あ!もしかして、てるてる坊主!?」
君はパッと嬉しそうに笑う。
「だって顔無いんだもん、分かるわけないじゃん。私が手本見せてあげるよ。」
言ってしまってから、君の暇潰しに付き合うコトになったのに気が付いた。
まぁ、こんな雨の日も楽しいかもしれない。
そう思って、輪ゴムやマジックを探すため起き上がった。
そして数十分後――。
「うわソレ、ぶっさいくー。」
「そっちのだって、どう見ても頭の形おかしいし。」
2体の少しいびつなてるてる坊主を握りしめて笑う君と私がいた。そのままベランダへと向かう。
外は相変わらず雨だった。君はそれを見て少し嫌な顔をした。
――私は好きだよ。だって雨の日は世界が変わる気がするんだ。
大切なものを、思い出せる気がするんだよ?
君にそう言おうと思ったけど止めた。
「もうすぐ晴れるよ。」
そう、きっともうすぐ晴れるから。
雨は忘れ物を。
てるてる坊主は太陽を。
ここに届けてくれるハズだから。
The End
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