口癖




「かっくいぃ」

あ、言ってしまった。

これは私の言葉じゃない。彼が使っていた言葉だ。

友達と雑誌見ながらしゃべってて、そしてついこの言葉が。

彼の口癖が私にもうつる。




彼と同じクラスになって、彼のことを好きになって、彼のことをつい観察してしまう。

今日はどんな服装で、どんな髪型?

ほとんど変わることはないけれど、毎日毎日それを見るのが楽しみだ。

話すことはないけれど、友達との話し声は聞こえてくる。

当然、彼の口癖も分かってくる。

『かっくいぃ』

いつの間にか自分にもこの口癖がうつっていた。

かっこいいが『かっくいい』




彼に聞こえちゃったかな?

恐る恐る彼を盗み見る。

広い教室の中。でも彼との距離は2メートル。聞こえても不思議じゃない。

けど彼は今、友達と話しに夢中らしい。

よかった。

聞こえてなかったのだと胸を撫で下ろす。

休み時間だもの、皆の声で聞こえないよね。




放課後は気が緩む。

彼はもう部活に行っていて、今教室には友達と3人だけ。

いろんな話で盛り上がる。

で、なりゆきで休み時間のことをうっかり話してしまう。

彼の口癖を。

そんな話をしていたら、ガラっという物音がして、びっくりした。

その音はドアを開ける音。

ドアのほうに目を向けると彼が入ってきた。

「よっ」

彼は忘れ物をしたらしく取りに戻ってきた。

なんで、タイミングよく入ってくるんだか・・・

聞こえてないよね?

私は一人真っ赤になって固まってた。

彼が「バイバイ」といって教室を出て行く。




数分経って、私は立ち上がる。

「ちょっと水飲み場に行ってくる」

友達に断って教室を出る。

顔の赤いのが消えず、顔を冷やしに行くために。

ドアを開け左右を見渡す。

よかった。彼はいない。




急いで水飲み場に行った。そしたら彼がいて・・・

顔を洗ってた。

今なら気づかれない。

そう思い振り返って、もときた道を歩く。

そしたら私の名前を呼ばれた。

彼が言ったのだ。




「聞こえてたよ」

えっ!?何が!?

突然の言葉に一瞬頭が真っ白になった。

さっきのこと聞かれてた!?

「今日の休み時間も言ってたの知ってる。」

うそっ

「聞こえてた。」

そして、彼の顔が少し赤くなったのが分かった。










「いつも君の事見てたから」














お題『口癖』

□ヒトコト
あれですね・・・やっぱり李乃さんに書き直してもらえばよかった(;_;)
こういう物語が好きだったりします。のほほんとした感じv
                                   2005.11.5  南海。

  
トップ  お題にモドル


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