四季に捧げるセレナーデ

〜それぞれの未来へ〜

はいはい、わかってるわよあんたの気持ちなんて、

そんなことを思い浮かべながら私は目の前の紅茶を消費することに

労力を費やす。

向かい側に座り、さっきから泣き崩れているのは高校時代からの悪友、

春日小夜、というか・・お前恥ずかしいぞ・・・・・・

この喫茶店、もう入れないな〜などと思いながら

もう一口、紅茶を飲む。

先日、卒業式も終わり、私は大学、小夜は専門学校という進路を選んだ。

彼女が泣き崩れている原因、それはおそらく、いや確実に我が幼馴染、晶のせいである。

覚えとけよ・・・・あのへたれ!!!

心の中で思いっきり悪態をつき、私は小夜に見えないように舌打ちをした。

「うっ・・・・・ぇ・・・・・・うううっ・・・・・・・・」

子供のように泣きじゃくる小夜を見ながらため息をつき、その肩をぽんぽんと叩く。

「小夜、わかったから、何があったの?」

「・・・・うっうっ・・・晶が・・・・・・別かれようって・・・・・」

「・・・・ほぅ・・・・」

殺す・・・・絶対殺す・・・

よくも人の親友泣かせやがったな!?

心の中で晶の絞め方を考えながら一見優しそうに見えるように微笑んでやる。

「理由は?」

「わかんない・・・・・・」

「・・・・・」

絶対殺す・・・・・・・・・・・・・・

「突然?」

「うん・・・・・・・」

「晶が小夜の家に行ったの?」

「ううん・・・電話・・・・・・」

・・・電話だと?あのピアノ馬鹿男、こっぱずかしい告白したのはてめぇのほうじゃねぇか・・・

その上よりによって電話だ?

・・・前言撤回、殺すだけじゃ飽きたらん・・・・・

地獄に送ってやる・・・・・

若葉がかなりイってしまっているなか、

バイトの店員と店長が顔を見合わせて泣きじゃくるうら若い女性と

背後にブラックなオーラを漂わせるこれまた若い女性を見守っていた。

その日の午後、

「こら!!晶!!!!!」

かって知ったる他人の家、

若葉がほぼ、無理やり晶の部屋のドアを開ける。

そこには、どんよりとした黒いオーラ・・・

「・・・・?」

はぁ?なんであんたが落ち込んでるのよ・・・・?

普通いきなり振った男がそこまで情けない顔する?

馬鹿じゃない・・?

などなど、さまざまな言葉が浮かんだがとりあえず、声をかけてやる。

「晶?小夜振ったんですって?」

次の瞬間、泣き崩れた晶がいた。

どこまでもにているバカップルである。あ、元か・・・・

「お・・・・俺だってなぁ・・・・・・・・・好きで・・・・」

なにやらぶつぶつ言ってはいるが聞こえたものじゃない。

近くにあった和独辞典で思いっきり殴ってやる。

ん?和独?独和ならともかく・・・なんで?

「・・・?晶、どういうこと?」

「・・・・・・・・・・・・」

理由を聞いて唖然とした。

「若葉!!」

晶に理由を聞いてから一週間後、私は家の近くの公園に小夜を呼び出した。

小夜が私を見つけ駆け寄ってくる。

卒業と同時に切ったばかりの栗色のショートカット、

春物の空色のツーピース、以前、一緒に買い物に行ったとき買ったもの、

「ねぇ、晶、なんて?」

「・・・・・あのね、小夜、よーく聞いてね。」

本当はこんなこと言いたくないのだけれども・・・・・・・

「晶は・・・・もう、日本にいないの。」

「え?」

「ウィーンってわかる?ヨーロッパの都市なんだけど・・・」

「・・・・・」

次の言葉は小夜にとって死刑宣告にも誓い事、でも、いわなければならない。

それが、小夜の親友として、晶の幼馴染としての努めであった。

「晶はね、そこの音楽学校に留学したの、もしかしたら、一生、そこで暮らすかもしれないわ。」

見る見るうちに小夜の瞳が潤む、

「・・・・・省吾さんが・・・・今度かなり長くヨーロッパで活動するの、

本当は、晶は日本の音大をでてから留学を考えるはずだったんだけど・・・・

やっぱり・・・ピアニストとして、本場に行きたいって、広い世界を見てみたいって、

小夜は、つらいからなかったことにしようって・・・」

唇をかみ締めた小夜が私を見上げる。

「・・・・・・・・何よ・・・さいてー」

「そうね、どうする?」

「きまってるわ!!誰が別れてなんかやるみもんですか!!」

そうでしょうね、そういうとおもったわ、さすが小夜、晶とちがってなんて男前・・・・(違)

「やっぱり!!?だからちゃんと省吾さんから住所聞いてきたわ!!

早速手紙でも送りつけちゃいなさい!!」

「ええ!!」

固くこぶしを握りあさっての方向を見ながら再戦を誓う小夜、

まったく、やっぱり女は強いわねぇ・・・

ああ、結局どうなったかって?

とりあえずは晶があっちの学校を卒業してから考えるそうよ。

晶も未練たっぷりどころの話じゃないくらい引きずってたからちょうどいいでしょ?

でも、浮気なんてしたらたたり殺してやりましょうかね。






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